艶道通鑑とは
『艶道通鑑(えんどうつうかん)』とは?
『艶道通鑑』は、江戸時代に書かれた性文化に関する指南書の一つであり、男女の情交や性愛に関する技法を詳しく記した書物です。具体的な成立時期や著者については明確な記録が残っていませんが、江戸時代の春本(しゅんぽん:性愛に関する書物)の中でも特に影響力のあるものの一つとされています。
『艶道通鑑』の特徴
この書は、単なる性技の解説書にとどまらず、性愛に関する哲学や健康法、陰陽の考え方なども含まれており、当時の人々の性に対する考え方を知る上で貴重な資料です。
1. 四十八手の解説
- 四十八手とは、日本における伝統的な性交体位の種類を指す言葉で、『艶道通鑑』にもそれに関連する記述があります。
- 具体的な技法や体位の説明に加えて、男女の快楽や満足度を高めるための工夫も紹介されています。
2. 性交の心得と作法
- 男女の交わりを単なる肉体的なものではなく、精神的な結びつきとしても捉える考え方が述べられています。
- 「愛撫の重要性」や「相手を思いやる心」についても記述されており、当時の性的な倫理観やマナーを知る手がかりとなります。
3. 健康と性愛の関係
- 性行為を健康維持の一環として捉える考え方があり、精力増進や長寿のための方法も述べられています。
- これは、中国の『素女経』や『房中術』の影響を受けていると考えられています。
4. 陰陽思想との関連
- 男女の交わりを「陰」と「陽」の調和と考える中国の道教的な思想を取り入れており、バランスの取れた性生活が健康につながると説かれています。
『艶道通鑑』の影響
『艶道通鑑』は、江戸時代の遊郭文化や武士・町人の性生活に影響を与えただけでなく、後世の性愛文化にも影響を及ぼしました。
- 春画(浮世絵のエロティックな版画)とともに、江戸の風俗文化の一環として普及。
- 明治時代に入ると西洋の性文化が流入し、四十八手の概念は次第に衰退したが、一部の文化人や研究者がその価値を再評価。
- 現代においても、日本の性文化の歴史を知るための資料として注目されています。
まとめ
『艶道通鑑』は、単なる性技のマニュアルではなく、性愛を通じた精神的な交流や健康維持の方法を説いた江戸時代の指南書です。四十八手の解説や、性交における心得、陰陽思想との関係性など、多角的な視点で性を捉えています。江戸の遊郭文化や春画とともに、日本の性文化史において重要な書物の一つと言えるでしょう。